電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD21004
タイトル(和文)
建物内の多様な温熱環境を模擬可能な快適性試験室の開発 その3 エアコン暖房環境の再現手法と妥当性の検証
タイトル(英文)
Development of a comfort test room that can simulate various thermal environments in a building Part3: Reproduction method of air conditioning heating environment and validation of the method
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
住宅分野でのエネルギー使用量の3割を占める暖房の省エネを進めるには、生活者の温熱快適性への配慮が不可欠である。このためには暖房時の室内温熱環境(以降、暖房環境)の不満の原因とされる空気の上下温度ムラや、窓や周壁温度の不均一性を考慮して温熱快適性を評価する必要がある。そこで、不均一な温熱環境を模擬可能な快適性試験室(以降、試験室)注1)を構築し、人体が不均一な温熱環境から受ける熱影響を実験と数値シミュレーション両面から評価できる環境を整えてきた[1][2]。
目 的
現実の室内空間の多様なエアコン暖房環境を、試験室内に再現する手法を開発する。さらに、実験により、手法の妥当性を検証する。
主な成果
1. 多様なエアコン暖房環境を試験室内に再現する手法の開発
サーマルマネキン(以降、マネキン)注2)とシミュレーション注3)を活用したエアコン暖房環境の再現手法を開発した(図1)。試験室でのマネキン近傍の上下温度分布と部位ごとの放熱量(放射、対流)が、現実の室内空間(模擬室)の目標値と同じになるように試験室を制御し、再現を図る。本手法の特徴は、放射による放熱量をシミュレーションで解析し、放熱量を放射と対流に分離して評価できるようにしたこと(図1の「特徴1」)に加え、専用の調整用インターフェースにより再現途中の状況を視覚的にリアルタイム把握できるようにし(図1の「特徴2」)、再現精度の向上と調整の効率化を同時に図った点にある。
2. 再現手法の妥当性の検証
異なる4ケースのエアコン暖房環境を試験室内に再現した(図2)。マネキン近傍の上下温度分布と部位ごとの放熱量の目標値と再現値を比較したところ、前者は各ケースとも0.5℃以内の差で一致し、後者は最大差が放熱量の総量で3%、放射による放熱量5%、対流による放熱量19%であった(図2の「ケース3の再現結果」)。対流による放熱量の差が若干大きいが、エアコン風量の強弱の違いで生じる放射と対流による放熱量の大小関係をよく再現できており、再現手法は概ね妥当と判断できる。
今後の展開
試験室の温熱環境の再現精度の向上を図るとともに、床暖房環境等も再現可能にする。さらに、本試験室における被験者による温熱快適性評価に着手する。
注1) 壁に設置した12枚の放射パネルと上下2段の空気回転流を組み合わせ、多様な不均一温熱環境を形成できる。
注2) 内蔵ヒータとマイコンで人体発熱を模擬し、部位ごとの放熱量(放射+対流(本報告))を計測する装置。本報告では着衣なし(裸体)、表面温度を32.6℃に維持した状態で使用した。
注3) 当所開発の住宅用室内温熱環境設計ツールCADIEE(例えば、電力中央研究所 研究報告R06016)。
概要 (英文)
It is necessary to evaluate thermal comfort by taking into account the unevenness of vertical air temperature, which is considered to be a cause of dissatisfaction with the heating environment, and the non-uniformity of window and perimeter wall temperatures. Therefore, we have constructed a comfort test room that can simulate non-uniform thermal environments, and have prepared an environment that can evaluate the thermal effects on the human body from both experiments and numerical simulations.
In this report, we have developed a method of reproducing a thermal environment in the test room that is equivalent to that of an air-conditioned heating environment. By using thermal mannequins and simulations, we controlled the test room so that the vertical temperature distribution near the mannequins and the amount of heat dissipated by each part of the mannequins in the test room would be the same as those in the air-conditioned heating environment. Four different air-conditioned heating environments were reproduced in the test room. The results of the comparison between the target and the reproduction of the upper and lower temperature distributions and the amount of heat dissipation showed a good agreement between them, and the validity of the method was verified.
報告書年度
2021
発行年月
2022/07
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
宮永 俊之 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
上野 剛 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
岩松 俊哉 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
安岡 絢子 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
安田 昇平 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
不均一温熱環境 | Non-uniform thermal environment |
温熱快適性 | Thermal comfort |
エアコン暖房 | Air-conditioning heating |
温熱環境再現 | Reproduction of thermal environment |