電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD21001
タイトル(和文)
EVアグリゲーションによるVPP事業の可能性評価 -九州V2G実証事業における当所の3か年成果-
タイトル(英文)
Evaluation of the Feasibility of Virtual Power Plant Business with EV Aggregation - Summary of Three-year Results of Kyushu V2G Demonstration Project -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
電気自動車(EV)を電力需給調整に活用するV2G(Vehicle to Grid)は、再生可能エネルギーの出力変動を緩和する手段として期待されている。しかし、需給調整に活用するためのEV充放電制御手法の検証やその導入可能性の評価は行われてこなかった。九州電力、電力中央研究所、日産自動車、三菱自動車工業、三菱電機の5社は、2018~2020年度において、EVの需給調整への活用可能性を検証する実証事業を行った。
目 的
本実証事業において、当所は、V1G/V2G注)の導入可能性を、系統側、EVユーザー側、VPP事業者(アグリゲーター)側のそれぞれの視点から評価する。
主な成果
1.V1G/V2GによるエリアPV出力制御量の緩和効果【系統側の評価】
九州全域の将来のEV普及台数を120万台と想定し、当所既開発の次世代自動車交通シミュレータと起終点アンケート結果を用いて、エリア内の個々のEVの走行や充電行動をシミュレーションして、九州全域のV1G/V2Gによる需要創出量を評価した。駐車中EVの充電器への接続確率100%と仮定した場合、軽負荷期の休日昼間において、V1Gでは最大37万kW、 V2Gでは最大130万kWの需要創出ができる(図1)。V2Gによる事前放電を行うことで昼間需要を創出でき、年間PV出力制御量(kWh)の37%を緩和できる。
2. V1G/V2Gに対するユーザーの受容性調査【EVユーザー側の評価】
2019年12月に全国のEV所有者664名を対象に普段のEV充電行動やV1G/V2Gの受容性に関するアンケート調査を行った。調査結果では、7~8割のEV所有者は対価次第ではV1G/V2Gに協力可能とする一方で、電池劣化、EVの蓄電残量が減ること(電欠リスク)、駐車時間の拘束の3点を懸念している(図2)。V1G/V2Gを社会実装するにあたり、懸念事項を解消し受容される事業モデルを構築する必要がある。
3. V1G/V2Gを含む小規模リソースアグリゲーションの事業性評価【VPP事業者側の評価】
EV(V1G/V2G)の他に、家庭用ヒートポンプ(HP)給湯機、家庭用蓄電池の計3種類の小規模リソースを取り上げ、3次調整力②市場を対象にしたVPP事業の事業性評価を行った。どのリソースについても、現時点ではシステムコストが高く、3次調整力②市場からの収入のみに拠るVPP事業の成立は難しい(図3)。想定条件下では、EV_V2G(逆潮流OK)の事業価値が最も高く、次いで蓄電池(逆潮流OK)、HP給湯の順で事業価値が高いという結果が得られた。小規模リソースを活用するVPP事業を成立させるためには、システムコストの低減、制度設計、事業者側の工夫(エネマネなど他事業と合わせる等)が必要である。
今後の展開
V1G/V2Gは、技術的には問題ない水準にあり、今後、経済的に見合うサービスの選択と事業モデルを検討する段階に入る。制度面からの支援(電池からの逆潮流を認める、職場充電環境の整備等)が必要である。研究課題としては、配電系統における影響(需給バランスや電圧変動、送電線混雑等)を評価し、対策を検討することが必要である。
注)V2Gは、通常のEVへの充電に加えて、EVの蓄電池から電力系統への放電を、電力需給調整に活用する方策である。電力系統に放電せずに、EVへの充電のみを需給調整に活用する方策はV1Gという。
概要 (英文)
Electric vehicle is expected to be a new flexibility-supplying energy resource to manage the power system with large-scale renewable integration as well as a low-carbon mobility option. We joined the government-funded Kyushu VPP demonstration project from FY2018 to FY2020 and evaluated the feasibility of VPP business with EV aggregation in Japan from different viewpoints of VPP stakeholders, that is, power system operator, EV users and VPP aggregator. The results show that V2G provides enough demand creation potential of about 1300MW to suppress the PV power output curtailment in Kyushu area if large number of EVs is widely used in the area, and more than 70% of EV users can accept V2G control to their own EVs during parking time though it depends on compensation, however battery degradation, decreasing stored energy and parking time restriction are their concerns. From our estimation, business value of VPP aggregator with EV aggregation is too low to start the business at present given the cost conditions in this study. Additional VPP aggregator efforts and governmental supports to raise the value are necessary to implement EVs in the power system as a flexibility-supplying energy resource.
報告書年度
2021
発行年月
2021/08
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
高橋 雅仁 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
後藤 久典 |
社会経済研究所 |
共 |
大嶺 英太郎 |
グリッドイノベーション研究本部 |
共 |
井上 智弘 |
社会経済研究所 |
共 |
高木 雅昭 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
坂東 茂 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
八太 啓行 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
山田 智之 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
共 |
浅野 浩志 |
電力中央研究所 |
共 |
池谷 知彦 |
企画グループ |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
電気自動車 | Electric vehicle (EV) |
ビークルツーグリッド | Vehicle to grid (V2G) |
アグリゲーション | Aggregation |
バーチャルパワー・プラント | Virtual power plant (VPP) |
可能性評価 | Feasibility evaluation |