電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

EX23007

タイトル(和文)

FERMATを用いた原子炉圧力容器の破損頻度評価手法の検討 -高温予荷重効果および照射量分布の影響評価-

タイトル(英文)

Investigation of Methods for Assessing Failure Frequency of Reactor Pressure Vessels Using FERMAT - Effect of Warm Prestressing and Fluence Distribution -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
確率論的破壊力学(PFM: Probabilistic Fracture Mechanics)の導入により、原子炉圧力容器(RPV: Reactor Pressure Vessel)の破損頻度 注1)を定量的に評価することが可能となった。米国では既にRPVの健全性評価の技術根拠としてPFMが活用されており、我が国でも活用に向けた準備が進められている。この中で、PFMに基づき非延性破壊の発生や亀裂が炉壁を貫通する破損頻度の計算を行うための標準的な要領を定めた電気技術指針JEAG 4640-2018 注2)(以下、JEAG4640)が発行された。当所では、JEAG4640に準拠したRPVの破損頻度評価のためのPFM解析コードFERMAT(Fracture mechanics Evaluation of RPV MATerials)を開発し、基本機能の検証を行った [1]。しかしながら、実機評価に向けてはRPV内表面における照射量分布など、より実際的な条件を考慮する必要がある。
目  的
高温予荷重(WPS: Warm Prestressing)効果 注3)およびRPV内表面における照射量分布がRPVの破損頻度に及ぼす影響を、国内プラントを想定したモデルケースでFERMATにより評価する。
主な成果
1.WPS効果の考慮による破損頻度への影響評価
JEAG4640本文のPFM-5210に記載のWPS効果を考慮することで破損頻度が低下することを確認した(図1)。また、WPS効果適用時のFERMAT内部の処理を可視化した結果、想定通り応力拡大係数KIが時刻tに対して単調減少((dKI)⁄dt<0)している点が亀裂進展開始の評価から除外され、亀裂進展開始の確率が変化することを確認した(図2)。
2. 照射量分布の考慮による破損頻度への影響評価
RPV内表面における照射量分布を考慮することにより破損頻度が顕著に低下することを確認した(図3)。また、照射量分布の考慮に関連し、溶接部の亀裂が母材と溶接金属の境界に存在する場合の破損頻度の評価方法を、米国のモデル(Parent/child関係 注4)(以下、P/C関係))を参考に検討した。この場合、母材と溶接金属のうち、より脆化が進んだ方の特性で亀裂貫通の有無が評価されるが、これによる破損頻度の変化は小さかった(図3)。

注1)亀裂が進展を開始する頻度である亀裂進展頻度、進展した亀裂がRPVの炉壁を貫通する頻度である亀裂貫通頻度、あるいはその両方を意味する。ここでは亀裂貫通頻度を指す。
注2)一般社団法人日本電気協会, 「電気技術指針 原子力編 確率論的破壊力学に基づく原子炉圧力容器の破損頻度の算出要領」, JEAG 4640-2018
注3)亀裂を有するフェライト鋼製の構造物や機器が高温で予め引張応力を生じる負荷を受けると、破壊靭性が見かけ上増加する現象。
注4)溶接部の亀裂が溶接金属と母材の境界上に存在する場合に、母材と溶接金属のうち、より脆化が進んだ方、すなわち関連温度RTNDTが高い方の材料特性で評価するモデルであり、米国のPFM解析コードFAVORに実装されている。

[1]EX22005「原子炉圧力容器を対象とした確率論的破壊力学解析コードFERMATの開発」(2023.04)

概要 (英文)

The failure frequency of reactor pressure vessels (RPVs) can be assessed quantitatively by using probabilistic fracture mechanics (PFM). PFM has already been used to determine screening criteria for structural integrity assessment in the United States. Discussions on PFM application are also progressed in Japan, and guideline JEAG 4640-2018 was established for standardizing methods for assessing failure frequency of RPVs. We have developed a new PFM analysis code FERMAT (Fracture mechanics Evaluation of RPV MATerials) for future application of PFM. The concept of our code is minimal design for practical use in structural integrity assessment of RPVs based on JEAG 4640-2018. PFM analyses were conducted for investigating the influence of warm prestressing effect and fluence distribution on failure frequency using a model case targeting Japanese RPV. By considering warm prestressing effect, the failure frequency was decreased. However, the influence of warm prestressing effect in JEAG 4640-2018 was not so significant. By considering spatial distribution of irradiation fluence in internal wall of RPV, the failure frequency was significantly decreased. Treatment of cracks in weld part barely affected the failure frequency.

報告書年度

2023

発行年月

2024/05

報告者

担当氏名所属

宮代 聡

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

酒井 高行

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

永井 政貴

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

キーワード

和文英文
確率論的破壊力学 Probabilistic Fracture Mechanics
原子炉圧力容器 Reactor Pressure Vessel
構造健全性評価 Structural Integrity Assessment
加圧熱衝撃 Pressurized Thermal Shock
破損頻度 Failure Frequency
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry