電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
EX22013
タイトル(和文)
2030年を想定した火力発電の脱炭素化技術に対する経済性および環境性の評価-二酸化炭素回収・貯留および化石燃料由来水素・アンモニアの利用-
タイトル(英文)
Economic and Environmental Evaluation of Decarbonization Technologies for Thermal Power Generation in 2030 - Utilization of Carbon Capture and Storage and of Fossil Fuel-derived Hydrogen/Ammonia -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
日本では、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS:Carbon Capture and Storage)技術や水素(H2)・アンモニア(NH3)といった脱炭素燃料の利用技術等を用いた火力発電の脱炭素化が検討されている。これらの脱炭素化技術を社会実装するためには、その経済性や環境性の把握が重要である。
目 的
火力発電にCCS技術および化石燃料由来H2・NH3の燃料利用技術を適用した場合の発電コスト、CO2排出削減量に対する発電コスト増加分、CO2排出原単位、CO2地中貯留原単位、および化石燃料消費原単位を試算し、経済性および環境性を評価する。
主な成果
2030年を想定した将来技術の諸元に基づき、エネルギー源として、天然ガス、ガス化用石炭、および一般炭を対象に、火力発電における直接利用、CCS技術利用、およびH2・NH3製造・利用の計12ケースを試算し、以下の考察を行った。
■発電コスト;天然ガスおよびガス化用石炭については、直接利用<CCS技術利用<NH3製造・利用<H2製造・利用の順で低い。この主な理由は、直接利用と比較して、CCS技術利用はCO2輸送・地中貯留費、H2・NH3製造・利用はH2・NH3製造設備・運転維持費、液化から揚地までの高い燃料輸送費が計上されていることが挙げられる。NH3の発電コストがH2より低い理由は、現状の想定技術では燃料輸送費が低いためである。
■CO2排出削減量に対する発電コスト増加分;CCS技術利用<一般炭のNH350%混焼利用<H2・NH3製造・利用の順で小さい。一般炭のNH350%混焼利用のCO2排出削減量に対する発電コスト増加分が小さい理由は、CO2排出原単位の大きい微粉炭ボイラにNH3を導入することで、一般炭の消費量抑制によるCO2削減効果が高いためである。
■CO2排出原単位;CCS技術利用やH2・NH3製造・利用では、CO2回収によって発電設備およびH2・NH3製造設備からのCO2排出量が削減され、相対的に上流注4)のCO2排出量が大きくなるため、上流のCO2排出量の評価や削減が必要になる。
■CO2地中貯留原単位;エネルギー源を天然ガスとした場合が相対的に小さい。このため、ガス化用石炭や一般炭にCCS技術を適用した場合、天然ガスをエネルギー源とした場合よりも、CO2貯留可能量をより早期に消費する懸念がある。
■化石燃料消費原単位;直接利用<CCS技術利用<H2製造・利用<NH3製造・利用の順で小さい。このため、直接利用からCCS技術利用およびH2・NH3製造・利用に転換することで、化石燃料の可採年数の減少が懸念される。
■総合評価;火力発電の脱炭素化技術として、CCS技術利用は経済性および環境性において相対的に評価が高い。一方、CCS技術は実現性や経済性が国内外を問わず不透明であるため、その動向を注視する必要がある。CCS技術および化石燃料由来H2・NH3では、CO2貯留可能量や化石燃料資源量に限界があるため、カーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギーや原子力等の脱炭素電源および脱炭素電源由来H2・NH3の利用へ繋がる電源構成のシナリオ作成が重要となる。
概要 (英文)
Levelized cost of electricity (LCOE), the increase in LCOE regarding CO2 emission reductions, CO2 emission intensity, CO2 geological storage intensity, and fossil fuel consumption intensity were estimated for thermal power generation with and without carbon capture and storage (CCS) that uses natural gas, coal for gasification steaming coal ,and fossil fuel-derived H2/NH3 in 2030. The main findings are as follows:
LCOE becomes higher for the CCS technology due to the costs of CO2 transportation and CCS and for the H2/NH3 fuel technologies due to the costs of H2/NH3 production and fuel transportation.
When CO2 emissions from power generation are significantly reduced through the CCS technology and H2/NH3 fuel technologies, the upstream CO2 emissions are relatively higher. Therefore, as decarbonization progresses, upstream CO2 emissions may need to be reduced.
Although CCS technology seems better than other technologies based on the estimates, its possibility and the costs of the implementation need to be evaluated in more detail.
Since amounts of CO2 storages and fossil fuel resources are limited, it is important to develop power supply mix scenarios that lead to using decarbonized sources such as renewable energy and nuclear power, as well as H2/NH3 from decarbonized sources.
報告書年度
2022
発行年月
2023/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
泰中 一樹 |
エネルギートランスフォーメーション研究本部 プラントシステム研究部門 |
共 |
市川 和芳 |
エネルギートランスフォーメーション研究本部 研究統括室 |
共 |
山本 博巳 |
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
二酸化炭素回収・貯留技術 | Carbon Capture and Storage |
水素 | Hydrogen |
アンモニア | Ammonia |
発電コスト | Levelized Cost Of Electricity |
CO2排出原単位 | CO2 Emission Intensity |