電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
EX22005
タイトル(和文)
原子炉圧力容器を対象とした確率論的破壊力学解析コードFERMATの開発
タイトル(英文)
Development of probabilistic fracture mechanics code for reactor pressure vessels: FERMAT
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
確率論的破壊力学(PFM: Probabilistic Fracture Mechanics)の導入により、原子炉圧力容器(RPV: Reactor Pressure Vessel)の破損頻度を定量的に評価可能となることが期待されている。米国では既にRPVの健全性評価の技術的根拠としてPFMが活用されており、我が国でも活用に向けた準備が進められている。この中で、PFMに基づき非延性破壊の発生や亀裂が炉壁を貫通する破損頻度の計算を行うための標準的な要領を定めた電気技術指針JEAG 4640-2018(注1)(以下、JEAG4640)が発行された。国内のPFM解析コードとしてはPASCAL4(注2)があり、国内外の規格に対応した豊富な解析オプションにより柔軟に破損頻度を評価可能である。一方で、解析オプションの適切な選択には専門知識が求められる。PFMの活用を進める上では、JEAG4640を軸とすることで選択が必要な解析オプションを最小限とし、評価者の専門知識の有無によらず同様の評価を簡便に実施可能なPFM解析コードが必要である。
目 的
JEAG4640に準拠したRPVの破損頻度評価のためのPFM解析コードを開発する。また、主要なモジュールの検証を行うとともに、実績のある国内のPFM解析コードであるPASCAL4と国内プラントを想定したモデルケースにおける比較評価を行う。
主な成果
1. FERMATの開発
JEAG4640に準拠したRPVの破損頻度評価のためのPFM解析コードFERMAT(Fracture mechanics Evaluation of RPV MATerials)を開発した。FERMATでは、前処理と後処理を含む全ての入力と処理をGUI(注3)(図1)上で完結することができる。
2. 主要なモジュールの検証
FERMATに実装されている主要なモジュールの検証を行った。例として、JEAC4201-2007 [2013追補版]に従う脆化予測コード[1]との比較において、FERMATの中性子照射脆化予測機能が適切に動作することを確認した(図2)。
3. PASCAL4との比較評価
確率論的評価の前段階となる決定論的評価として、FERMATとPASCAL4の両コードで内部亀裂の応力拡大係数を評価した結果はよく一致した(図3)。また、確率論的評価として、両コードで評価した定格負荷相当年数(注4)に対する亀裂貫通頻度もよく一致した(図4)。上記の比較を通じ、FERMATとPASCAL4で同等の評価結果が得られることを示した。
注1)日本電気協会 電気技術指針「確率論的破壊力学に基づく原子炉圧力容器の破損頻度の算出要領」
注2)日本原子力研究開発機構により開発された、RPVを対象としたPFM解析コードである。
注3)Graphical User Interfaceの略。
注4)定格出力で連続運転したと仮定して計算した年数。単位のEFPYは、英訳であるEffective Full Power Yearの略。
[1]Q12007「原子炉圧力容器鋼の照射脆化予測法の改良 ー 高照射監視試験データの予測の改善」(2013.03)
概要 (英文)
The failure frequency of reactor pressure vessels (RPVs) can be assessed quantitatively by using probabilistic fracture mechanics (PFM). PFM has already been used to determine screening criteria for structural integrity assessment in the United States. Discussion for PFM application is also progressed in Japan, and guideline JEAG 4640-2018 was established for standardizing methods for assessing failure frequency of RPVs. We have developed a new PFM analysis code FERMAT (Fracture mechanics Evaluation of RPV MATerials) for future application of PFM. The concept of our code is minimal design for practical use in structural integrity assessment of RPVs based on JEAG 4640-2018. Verification of FERMAT's modules such as a module for calculating reference temperature shift caused by neutron irradiation has been conducted. Calculation results by FERMAT were compared with another Japanese PFM code PASCAL4 with a model case targeting Japanese RPV. The stress intensity factor calculated by FERMAT and PASCAL4 was well corresponding with each other. The probability and the frequency of failure were also compared between FERMAT and PASCAL4. The outcomes assessed using those codes were closely related to one another.
報告書年度
2022
発行年月
2023/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
宮代 聡 |
エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門 |
共 |
酒井 高行 |
エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
確率論的破壊力学 | Probabilistic Fracture Mechanics |
原子炉圧力容器 | Reactor Pressure Vessel |
構造健全性評価 | Structural Integrity Assessment |
加圧熱衝撃 | Pressurized Thermal Shock |
破損頻度 | Frequency of Failure |