電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

EX22004

タイトル(和文)

原子炉圧力容器鋼の関連温度移行量の統計特性

タイトル(英文)

Statistical Characteristic of Transition Temperature Shift For Reactor Pressure Vessel Steel

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
 原子炉圧力容器(RPV)の健全性評価においては、運転中の中性子の照射による破壊靭性の低下、いわゆる中性子照射脆化をシャルピーカーブ(シャルピー吸収エネルギー
と温度の関係曲線)の高温側へのシフト量(関連温度移行量注1))により評価する。脆性破壊と延性破壊が混在する延性脆性遷移温度領域では、シャルピー吸収エネルギーに生来的なばらつきのあることが知られており、そのばらつきは関連温度移行量の推定に際して不確かさの要因となる。現行規程注2)では不確かさの影響を安全側に評価するため、関連温度移行量にマージン(安全裕度)を見込むこととしている。マージンは統計的な考え方に基づきこれまでに取得された監視試験データベースから決められているが、その妥当性は監視試験データベースにより帰納的に保証されるに留まっている。

目 的
 関連温度移行量のばらつきを記述するモデルを提案する。併せて、提案したモデルに照らして現行規程におけるマージンの設定の妥当性について検討する。

主な成果
1. 関連温度移行量のばらつきのモデル
 先行研究[1]において、RPV 鋼の延性脆性遷移温度領域下部のシャルピー吸収エネルギーの変動係数(標準偏差/平均)は温度によらず0.377 の一定値をとることが見出されて
いる。このことを出発点として、誤差の伝搬法則を利用して、関連温度の標準偏差を理論的に推定するモデルを提案した。これにより、シャルピーカーブにおけるシャルピー
吸収エネルギーのばらつき(図1)から温度のばらつき(図2)を導くことが可能となった。さらに、評価に必要なパラメータ(シャルピーカーブの形状、試験数)の充足性
に応じて関連温度移行量の標準偏差を推定する方法を提案した。

2. マージン設定の妥当性に関する検討
 現行規程におけるマージンを定める根拠となった監視試験材データに対する関連温度移行量の標準偏差は9.5 °C である。これを提案モデルに基づく標準偏差の推定値と比較
した(図3)。前者は様々な条件下での鋼材のデータを包括的に扱っているのに対し、後者は上部棚吸収エネルギーの関数として与えられていて直接的な比較はできないが、上
部棚吸収エネルギーが100 J を超えるような現実的な範囲では、現行規程の標準偏差が提案モデルによるその推定値を概ね保守的に包絡しており、靭性の生来的なばらつきを安
全側に見込んでいると言える。

概要 (英文)

In the ductile brittle transition temperature range, Charpy absorbed energy has an inherent variation, which causes the uncertainty of the transition temperature shift. In the current codes on the evaluation of the fracture toughness for reactor pressure vessel steels, margins are taken into account to cover the uncertainty of the transition temperature shift. Although they have been statistically determined, the adequacy of the margins is only inductively assured by specific surveillance program database. In this report, a model was proposed to describe the statistical characteristics of transition temperature shift. The equation to describe the standard deviation of the associated transition temperature was theoretically derived from the previously proposed variation model of Charpy absorbed energy in consideration of the propagation of uncertainty. They were then compiled to the procedures to estimate the transition temperature shift, according to the sufficiency of the parameters required for the evaluation (shape of Charpy curve and sample size). The standard deviations of the transition temperature shift assumed in the current codes were compared with those predicted by the proposed model. In the realistic range of the upper shelf energy (larger than 100 J), the standard deviations in the current codes generally limit the standard deviation estimated by the model, therefore, the inherent variation in toughness seems to be conservatively considered.

報告書年度

2022

発行年月

2023/04

報告者

担当氏名所属

三浦 直樹

エネルギートランスフォーメーション研究本部

信耕 友樹

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

キーワード

和文英文
シャルピー吸収エネルギー Charpy Absorbed Energy
破壊靭性 Fracture Toughness
延性脆性遷移温度 Ductile Brittle Transition Temperature
関連温度移行量 Transition Temperature Shift
統計特性 Statistical Characteristics
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry