電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
EX21009
タイトル(和文)
オーステナイト系ステンレス鋼SUS304のクリープ特性に及ぼす冷間加工の影響 -第2報:予ひずみ材の長時間クリープ破断特性-
タイトル(英文)
Effect of Cold Working on Creep Properties of Type 304 Austenitic Stainless Steel - 2nd Report: Long Term Creep Rupture Property of Pre-Strained Materials -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
構造材料には、機器の製造やプラントの建設時において冷間加工により塑性ひずみが生じることがあり、冷間加工後に熱処理をせずそのまま高温環境で使用されることも少なくない。これらの機器の適切な寿命管理のためには、長時間のクリープ特性に及ぼす塑性予ひずみの影響を明らかにし、冷間加工ままの部位に対する寿命評価法を整備する必要がある。当所では、SUS304鋼を対象に、予め室温で引張及び圧縮の塑性予ひずみを付与した材料に対してクリープ試験を実施し、比較的短時間の試験データを基に、冷間加工部に対するクリープ損傷評価法を提案した[1]が、長時間領域での試験データが不足しており、実用上重要となる低応力域での適用性については十分に検証できていない。
目 的
SUS304鋼の予ひずみ材に対する長時間クリープデータを拡充し、予ひずみを与えていない材料(受入まま材)に対する文献データ注1)も含めて、前報[1]で提案したクリープ構成式やクリープ破断延性式の適用性を確認し、必要に応じてこれらを高精度化してクリープ損傷評価への影響を確認する。
主な成果
1. 予ひずみ材の長時間クリープデータの拡充
予ひずみ材に対する600 ℃でのクリープ試験を継続し、2万時間を超える破断データを取得した(図1)。高応力域では、予ひずみ材のクリープ破断寿命は受入まま材よりも長いが、20%予ひずみ材のクリープ破断特性は200 MPaあたりを境に急激に折れ曲がり、20%圧縮予ひずみ材の120 MPaにおける寿命は、受入まま材の寿命と逆転し、短寿命となった(図1)。圧縮予ひずみ材の寿命は引張予ひずみ材よりも短い傾向があるが、現状では有意な差ではない(図1)。
2. 既存のクリープ構成式及びクリープ破断延性式の適用性確認と高精度化
応力と最小クリープひずみ速度の関係において、前報のクリープ構成式では低応力条件(受入まま材の69 MPaや20%予ひずみ材の120 MPa)の最小クリープひずみ速度を過小評価する傾向がみられた(図2)。低応力域のクリープひずみ速度を応力のべき乗則ではなく、指数関数で表すようにクリープ構成式の改良を行い、これらの予測精度を向上させた(図2)。また、最小クリープひずみ速度とクリープ破断延性の関係において、前報のクリープ破断延性式では低ひずみ速度域におけるクリープ破断延性を過大評価する傾向がみられた(図3)。低ひずみ速度域と高ひずみ速度域で別々の評価式を与え、これに加えて、引張試験の破断伸びに基づく破断延性の上限値も設定することで、幅広いひずみ速度域でのクリープ破断延性の予測精度を向上させた(図3)。
3. モデルの改良によるクリープ損傷評価への影響確認
改良したクリープ構成式およびクリープ破断延性式を組み込んだ有限要素解析により、前報と同様のボイラチューブ曲げ部に対するクリープ損傷評価を実施した。改良モデルを使用することで、全体的なクリープ損傷は前報で示した結果よりも大きくなるが、塑性予ひずみの考慮によってクリープ損傷が大きく加速されることや、クリープ損傷が最大となる位置については前報と同様の結果が得られた(図4)。
概要 (英文)
Creep tests at 600 C were performed on type 304 austenitic stainless steels with tensile or compressive pre-strain in order to clarify the effects of cold working on creep deformation and rupture life. Creep rupture data over 20,000 hours have been obtained, and some long-term creep tests for over 20,000 hours have been continued. Creep rupture lives of the pre-strained materials were longer than those of as-received materials in high stress region. However, the creep rupture curve of 20% pre-strained material bent sharply around 200 MPa, and creep rupture life of 20% compressive pre-strained material at 120 MPa was less than the half of as-received material. The creep constitutive model in the previous report tended to underestimate minimum creep strain rate in low stress region. Therefore, a modified creep constitutive model was developed in which creep strain rate in the low stress region was expressed by an exponential function instead of the power law function. The creep rupture ductility model in the previous report tended to overestimate creep rupture ductility in the low strain rate region. A modified creep rupture ductility model, which gives separate evaluation formulas for the low strain rate region and high strain rate region, and also sets the upper limit value based on the rupture elongation of the tensile test, was developed to improve the accuracy of creep rupture ductility estimation over a wide strain rate range.
報告書年度
2021
発行年月
2022/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
茂山 治久 |
エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
クリープ | Creep |
冷間加工 | Cold Working |
オーステナイト系ステンレス鋼 | Austenitic Stainless Steel |
クリープ破断延性 | Creep Ductility |
クリープ構成式 | Creep Constitutive Model |