電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
EX21008
タイトル(和文)
浅地中ピット処分環境における金属腐食による体積膨張挙動の調査(その2) -腐食生成物の化学形態に及ぼすCaイオンの影響-
タイトル(英文)
Investigation of volume expansion resulted from metal corrosion under the condition in near-surface pit disposal facility (part 2) -Effect of Ca ions on the chemical morphology of corrosion products-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
低レベル放射性廃棄物の埋設施設では、金属廃棄物の腐食による体積膨張がバリア機能に影響を及ぼす懸念がある。このため長期的な環境(温度、pHや酸素濃度)注1)の変化を考慮した金属の腐食膨張前後の体積比(以下、体積比と呼ぶ)の推定が求められている。前報[1]では、施設や廃棄体内部に存在するCa2+の影響を考慮せずに、化学平衡計算ソフトHSC Chemistry for Windows Ver.9.3.0(以下、HSCと呼ぶ)等により腐食生成物の化合物形態を推定し、その真密度から体積比を評価した。一方、体積変化を伴わずにCa2+がコンクリート等から溶脱する場合は、腐食生成物に取り込まれたCa2+が体積膨張の要因となる可能性がある。想定される環境条件(表1)に不確実性もあるため、Ca2+が共存する環境条件も考慮し、複数の熱力学計算ソフトウエアでの評価と実験による検証により、埋設施設で生成の可能性がある腐食生成物を網羅的に抽出する必要がある。
目 的
HSCおよびThe Geochemist's Workbench Release12 (以下、GWBと呼ぶ) 注2)によりCa2+の共存も考慮した環境条件において、鉄およびその他の金属の安定な化学形態を評価する。また、代表的な条件において、沈殿物を合成し、想定した環境条件で生成する腐食生成物の化学形態を実験により評価する。これらの結果から可能性がある腐食生成物を網羅的に抽出し、体積比を評価するとともに、今後の課題を抽出・整理する。
主な成果
1. 熱力学計算ソフトウエアによる化学形態の評価
GWBおよびHSCともに、ニッケル、アルミニウム、銅および亜鉛の腐食生成物はCa2+の影響を受けず、鉄はCa2+の共存により安定な化合物が変化する結果となった(表2)。
2. 沈殿物合成試験による化学形態の評価
窒素ガスで置換したグローブボックス内で、金属硫酸塩水溶液にNaOH水溶液を滴下し、pH約12.5あるいは約13.0の水溶液中で沈殿物を合成した。化学分析の結果、Ca2+共存環境において生成した鉄、ニッケルおよびアルミニウムの沈殿物には、有意な量のCaが含まれていたが、化合物の同定には至らなかった(表3)。
3. 化合物の真密度による体積比の評価
有害塩が共存するCase 2では、鉄の腐食によりFe2O3、Fe3O4、FeOOH、Fe(OH)2、CaFe2O4、FeS2の生成が想定され、体積比は2.1から3.7と評価された(表4)。一方で、基本的な条件であるCase 1では、熱力学計算ソフトウエアでの評価の結果、Ca-Fe複合酸化物の生成が示唆され、この体積比(3.1)が最大となる。環境条件によっては、生成する腐食生成物の種類や組成が異なる可能性もあることから、長期間の腐食試験やモックアップでの長期腐食モニタリングなど更なる検討が必要である。
概要 (英文)
There is a concern that the volume expansion of metal wastes due to corrosion may affect the barrier performance in the burial facility for low-level radioactive wastes. Therefore, it is necessary to estimate the volume expansion ratio considering the changes in the burial environment (temperature, pH, and redox conditions). In the previous study, the ratio was evaluated by estimating the chemical compound in corrosion products using chemical equilibrium calculation software HSC Chemistry without considering the effect of Ca. However, if Ca leaches out from concrete without volume change, Ca incorporated into the corrosion products may affect the volume expansion ratio. In this paper, two thermodynamic analysis software were used to estimate corrosion products that may be formed under the environmental conditions of buried facilities where Ca coexists. In addition, precipitates were synthesized under typical conditions, and the chemical forms of the obtained precipitates were confirmed. The volume expansion ratio were evaluated from the true density of the compounds presumed to exist from these results. As corrosion products of iron, Fe2O3, Fe3O4, FeOOH, Fe(OH)2, CaFe2O4 and FeS2 were assumed to be formed, and the volume ratio was evaluated to be 2.1 to 3.7.
報告書年度
2021
発行年月
2022/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
藤原 和俊 |
エネルギートランスフォーメーション研究本部 エネルギー化学研究部門 |
共 |
山本 悠大 |
エネルギートランスフォーメーション研究本部 エネルギー化学研究部門 |
共 |
廣永 道彦 |
サステナブルシステム研究本部 構造・耐震工学研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
低レベル放射性廃棄物 | Low-level radioactive waste |
浅地中ピット処分施設 | Near-surface pit disposal facility |
金属 | Metal |
腐食生成物 | Corrosion product |
体積膨張 | Volume expansion |