電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

EX21004

タイトル(和文)

遠心鋳造ステンレス鋼の超音波伝搬シミュレーション ―凝固組織モデルの妥当性評価―

タイトル(英文)

Numerical simulation of ultrasonic wave propagation in centrifugally cast stainless steel - Validation of solidification grain structure model -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
遠心鋳造ステンレス鋼管は,主に加圧水型原子力発電所の供用期間中検査の対象である一次冷却材配管等に用いられるが,凝固組織に起因する超音波の散乱減衰などにより,超音波探傷試験は困難である.適切な探傷条件を決定するためには,凝固組織を把握し,シミュレーションにより超音波伝搬挙動を明らかにする必要がある.当所では砂型鋳造ステンレス鋼の鋳造工程を反映したセルラーオートマトン法(CA法)注 )により,その凝固組織を予測し,有限要素法(FEM)に基づく超音波伝搬シミュレーションを実施してきた注 ).しかしながら,遠心鋳造ステンレス鋼については,その鋳造工程における溶湯の挙動が複雑であるため,工程を反映したCA法による凝固組織の予測は困難である.
目  的
遠心鋳造ステンレス鋼の超音波伝搬シミュレーションを実施する上で適切な凝固組織モデルを複数検討し,特に超音波の減衰の原因となる散乱波の挙動からその妥当性を評価する.
主な成果
1. 凝固組織モデルの作成
金属組織を横等方性材と見做したモデル,実際の凝固組織観察結果から柱状晶を一方向に同寸法で並んだ六角柱で再現した簡易モデルを作成した.また,遠心鋳造の際に想定される温度分布と結晶粒成長を再現するようにパラメータ調整したCA法に基づく凝固組織モデルを作成した(図1).
2. 凝固組織モデルの妥当性評価
作成した凝固組織モデルを用いて実施した超音波伝搬シミュレーションの結果を,実験的に測定した超音波伝搬と比較した(図2).その結果,CA法モデルと六角柱モデルでは先頭波及びその後ろに現れる散乱波を再現できた.また,超音波伝搬を時空間フーリエ変換することで算出した逆速度分布によって,先頭波や散乱波の挙動の妥当性を評価する手法を考案した(図3).評価の結果,CA法モデルの逆速度分布は先頭波及び散乱波に対応すると考えられる逆速度のピークが現れる位置が実験結果に最も近く,超音波の減衰特性を把握する上で最も適切なモデルと考えられる.以上より,大まかな探傷条件の決定には六角柱モデル,詳細な条件決定にはCA法モデルを用いることが考えられる.
今後の展開
溶湯の冷却速度や結晶粒成長のパラメータの違いによる凝固組織の個体差をCA法モデルにより再現することを通じて,遠心鋳造ステンレス鋼に対する超音波探傷試験の高度化を図っていく.

概要 (英文)

Centrifugally cast stainless steel (CASS) is widely used in primary coolant piping of nuclear power plants because of its high corrosion resistance and high strength. An in-service inspection based on ultrasonic testing (UT) has to be conducted for weld joints of primary coolant piping on the basis of JSME Rules on Fitness-for-Service for Nuclear Power Plants. However, it is difficult to detect and size flaws in CASS components with high accuracy because of the following reasons: Ultrasonic waves are scattered and attenuated due to coarse grains, and anisotropic and heterogeneous properties in CASS lead to ultrasonic beam skewing. Numerical simulations are useful and reasonable ways for better understanding the ultrasonic wave propagation behavior in CASS. To effectively achieve this, the simulation model should include a three-dimensional (3D) grain structure. In this study, we modeled three kinds of the solidification grain structures of centrifugally CASS. One is obtained by using a cellular automaton method, another consists of many hexagonal columns with the same dimensions, and the other is transversely isotropic material. Then these structures were fed into an explicit finite element model for simulating wave propagation and the simulated results were compared with those measured by a laser Doppler vibrometer. Through the comparison, we investigated the applicability of these three kinds of solidification grain structure models to simulation for wave propagation.

報告書年度

2021

発行年月

2022/04

報告者

担当氏名所属

永井 政貴

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

林 山

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

棗 千修

秋田大学

キーワード

和文英文
超音波探傷試験 Ultrasonic Testing
遠心鋳造ステンレス鋼 Centrifugally Cast Stainless Steel
波動伝搬シミュレーション Wave Propagation Simulation
セルラーオートマトン法 Cellular Automaton Method
有限要素法 Finite Element Method
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