電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

EX21002

タイトル(和文)

圧力容器鋼のシャルピー吸収エネルギーのばらつきの特性

タイトル(英文)

Characteristics of Variation in Charpy Absorbed Energy for Reactor Pressure Vessel Steel

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
原子炉圧力容器(RPV)の健全性評価では、シャルピー衝撃試験により得られるシャルピーカーブ(シャルピー吸収エネルギーと温度の関係曲線)が供用中の中性子照射によりどれだけ変化するかを見る必要がある。脆性破壊と延性破壊が混在した破壊形態をとる延性脆性遷移温度領域では、シャルピー吸収エネルギーに生来的なばらつきがある。延性脆性遷移温度領域の破壊靭性を直接的に評価するマスターカーブ注 )法によれば、破壊靭性が特定のワイブル分布に従うということが過去の膨大な試験データから確かめられており、またシャルピー吸収エネルギーには破壊靭性と密接な関係があることが知られている。監視試験では限られた試験数からシャルピーカーブを決める必要があることから、少数データからはうかがい知ることができないばらつきの特性を把握しておくことは、評価の信頼性を統計的に保証できるという点において意義は大きい。
目  的
既知の破壊靭性のばらつき、および破壊靭性とシャルピー吸収エネルギーの関係を基に、シャルピー吸収エネルギーのばらつきを記述するモデルを提案する。シャルピー衝撃試験によりシャルピー吸収エネルギーのばらつきのデータを取得し、提案モデルの妥当性を検証する。
主な成果
1. シャルピー吸収エネルギーのばらつきのモデルの提案
延性脆性遷移温度領域の破壊靭性がマスターカーブで表せてそのばらつきがワイブル分布に従うこと、シャルピー吸収エネルギーがシャルピーマスターカーブ注 )で表せることを前提として、シャルピー吸収エネルギーの分布特性を推定するモデルを提案した。シャルピー吸収エネルギーはワイブル分布、正規分布のいずれによっても良好に近似可能であり(図1参照)、分布形状を決めるパラメータ(ワイブル分布の尺度パラメータと形状パラメータ、正規分布の平均と標準偏差)は破壊靭性の中間値、参照温度とシャルピー参照温度の差、の二変数によってのみ決まることを理論的に導き、その決定のための近似式を導出した(表1参照)。
2. シャルピー吸収エネルギーのばらつきデータの取得
国産RPV鋼SQV2A母材に対し温度一定(–99, –84, –40, 23 ℃)条件で多数のシャルピー衝撃試験を行ってシャルピー吸収エネルギーのばらつきデータを取得した(図2(a)参照)。
3. 提案モデルの妥当性の検証
提案モデルにより延性脆性遷移温度領域でのシャルピー吸収エネルギーのばらつきを良好に推定できることを検証した(図2(b)~(d)参照)。

概要 (英文)

A statistical model to estimate the distribution characteristics of Charpy absorbed energy in the transition temperature range was proposed based on the variation in fracture toughness addressed by the Master Curve and the relationship between fracture toughness and Charpy absorbed energy related by the Charpy Master Curve. The Charpy absorbed energy in the transition temperature range can be well approximated by either the Weibull distribution or the normal distribution, and the parameters to determine the shape of those distributions (scale parameter and shape parameter of the Weibull distribution, mean and standard deviation of the normal distribution) can be theoretically defined as the functions of two independent variables, median of the fracture toughness and the difference between the reference temperature and the Charpy reference temperature. A series of Charpy impact tests were conducted under the same conditions to obtain the characteristics of the variation in Charpy absorbed energy for a national reactor pressure vessel steel SQV2A base metal, and the experimental variation was reasonably predicted by the proposed model.

報告書年度

2021

発行年月

2022/03

報告者

担当氏名所属

三浦 直樹

エネルギートランスフォーメーション研究本部

信耕 友樹

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

キーワード

和文英文
シャルピー吸収エネルギー Charpy Absorbed Energy
破壊靭性 Fracture Toughness
マスターカーブ Master Curve
ワイブル分布 Weibull Distribution
正規分布 Normal Distribution
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