電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
C20009
タイトル(和文)
気象衛星を用いた太陽光発電出力の高精度把握技術の開発 -散乱日射を高精度に推定するための大気・雲の3次元モデルの開発-
タイトル(英文)
Highly accurate estimation of photovoltaic power generation from meteorological satellite observation -A physical model of three-dimensional radiative effects for highly accurate retrieval of diffuse solar irradiance-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
電力系統の安定運用のために電力会社が行っている太陽光発電出力の現況値の把握では、気象衛星ひまわり8号の画像から推定した日射量が広く用いられている。その日射量推定では、簡便性を理由に、推定対象地点の真上の雲のみが考慮されてきたが、実際の日射の伝播は大気や雲の3次元構造の影響を受ける。全天日射を構成する直達日射と散乱日射のうち、推定対象地点に様々な方向から入射される散乱日射では、特に、この3次元構造の考慮が重要である。
目 的
全天日射のうち、雲が多い場合に大部分を占める散乱日射にまず着目し、大気や雲の3次元構造を考慮した物理モデルを開発して実測データで評価する。
主な成果
1. 散乱日射量の推定物理モデルの開発
・散乱日射の3次元性を考慮し、大気等による天空での散乱成分、日射量推定地点から離れた地点の上空にある雲による散乱成分、雲と地表面の間の光の多重散乱成分からなる物理モデルを構築した(図1)。
・開発モデルの計算に特に重要な物理量である雲の光学的厚さについて、ひまわり8号の光反射率観測データから推定する方法を開発し、米国航空宇宙局(NASA)が推定した高精度な結果と比較して、両者が概ね一致することを確認した。
・さらに、赤城試験センターでの実測データの統計的な分析に基づき、雲の特徴を考慮したパラメータの選定手法を考案し、これを利用することで散乱日射量の推定精度が向上することを確認した(図2)。
2. 開発モデルの実測データによる評価
気象条件の異なる3つの期間のそれぞれ2ヶ月を対象に、赤城試験センターの散乱日射量の観測データを用いて開発モデルを評価した(表1)。この瞬時値の根平均二乗誤差は日射量平均値の30%強程度で、これまでの最高の技術水準である欧州中期予報センターの手法での、欧州を中心とした13地点の15分平均値の誤差63%をほぼ半減する結果を得た。これにより、大気や雲の3次元構造のモデル化が散乱日射量の推定精度向上に有効であることを確認した。
今後の展開
直達日射に対するモデルを開発し、本報告で開発した散乱日射の物理的なモデルと併せ、全天日射量の推定精度の向上を図る。
概要 (英文)
As the spatial resolution of satellite sensors increases, development of a physical model that considers three-dimensional radiative effects becomes important to improve accuracy of surface solar irradiance estimation from space borne observations of top of the atmosphere reflected radiance. A retrieval method of the cloud COT (optical thickness) from albedo data provided by AHI (Advanced Himawari Imager) observations was presented. We have revealed COTs retrieved from the AHI data with the presented method are consistent with those of the NASA (National Aeronautics and Space Administration) operational cloud product available from MODIS (Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer), onboard Terra and Aqua satellites. A physical model of the diffuse irradiance was derived, considering three-dimensional radiative effects. Finally we have demonstrated the presented model provides diffuse irradiances with high accuracy, evaluating the errors from field data of Akagi testing center.
報告書年度
2020
発行年月
2021/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
宇佐美 章 |
材料科学研究所 電気材料領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
太陽光発電 | Photovoltaics |
現況値推定 | Real-time estimation |
気象衛星 | Geostationary meteorological satellite |
散乱日射 | Diffuse irradiance |
物理モデル | Physical model |