電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
C20004
タイトル(和文)
新型能動的単独運転検出機能の周波数ランプ変動耐量向上法の提案
タイトル(英文)
Proposal of a method for enhancing frequency ramp change tolerance of the new type active anti-islanding function
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
分散形電源は、系統連系規程の事故時運転継続(FRT)要件に従い、周波数変化速度-2~2Hz/秒の周波数ランプ変動に対して運転継続するように設計されている。しかし、太陽光発電を中心としたインバータ形分散形電源の連系量増大に伴う系統慣性の低下により、電力系統の周波数変化速度は増加する傾向にある。このため、分散形電源の不要解列の主要因となり得る単独運転検出機能の周波数ランプ変動耐量の向上が必要であり、特に、低圧連系の標準方式である新型能動的単独運転検出機能注1)の耐量向上が課題となる。
目 的
新型能動的単独運転検出機能を対象に、周波数ランプ変動に対する検出動作特性を明らかにする。これにもとづき周波数ランプ変動耐量の向上方式を提案する。
主な成果
1. 新型能動的単独運転検出機能の周波数ランプ変動に対する検出動作特性
同機能の検出部に用いられている代表的な周波数変化率検出方式注2) (図1(a))を対象に、計算機シミュレーションを行った(図1(b))。その結果、方式上、周波数ランプ変動耐量が小さくなる50Hz系において、同耐量は-2.0Hz/秒(周波数低下時)、2.4Hz/秒(同上昇時)であることを確認した。一方、要求される単独運転検出時間の上限0.2秒で検出に至る周波数変化速度から、単独運転時では、同速度が-4.2Hz/秒以下(周波数低下時)、4.4Hz/秒以上(同上昇時)となる時間が必ず存在注3)し、これらの条件を検出要素に加えることで、周波数ランプ変動耐量を顕著に向上できる可能性のあることを明らかにした。
2. 周波数ランプ変動耐量向上方式の提案
上記の結果から、1サイクル毎に周波数変化速度を監視・評価して単独運転の可能性有無を判定する「単独運転可能性判定機能」を提案した(図2)。0.2秒で検出に至る周波数ランプ変化速度をしきい値とし、これを逸脱しない限り「可能性なし」の判定を継続する。逸脱した場合は、更にFRT要件に準じ、電圧位相ステップ変化等の他の系統過渡動揺に対する誤判定を回避するため、3~4サイクルの周波数変化の連続性を確認して判定する。最終的な解列は、既設の単独運転検出部の検出とのAND条件で行う。
図1(a)の既設方式に提案機能を適用したモデルにより、種々の計算機シミュレーションを行い、設計通り、約2倍の周波数ランプ変動耐量の向上、他の過渡動揺に対する誤判定の回避、ならびに単独運転検出時間の維持をそれぞれ図れることを確認した(図3)。
今後の展開
バックアップ用の単独運転検出方式を含めた総合的な実証評価を行い、実用化を図る。
注1 ) 周波数ランプ変動耐量と単独運転検出時間が特にトレードオフの関係にある、周波数シフト方式系単独運転検出方式の一種で、周波数偏差をフィードバックして無効電力を注入する無効電力注入部と、これによって単独運転時に発生する周波数の急変を検出する単独運転検出部で構成される。0.2秒以内の高速検出が要求されている。なお、系統連系規程では、別途、バックアップ用としての任意の単独運転検出受動的方式の搭載を規定している。
注2) 2003~2009年度NEDO委託事業の新型能動的単独運転検出方式開発の一環で開発され、実用化されているもの。
注3) この場合、周波数変化速度-4.2Hz/秒、4.4Hz/秒は、上限0.2秒で検出しきい値に達する任意の周波数変化パターン各々の平均変化速度に相当する。これにより、0.2秒以内で検出しきい値に達する限り、単独運転時の全ての周波数変化パターンにおいて、周波数変化速度が上記の値に達するか、または越える時間が必ず存在することになる。
概要 (英文)
According to the FRT requirements of Japanese grid interconnection code, distributed power generation (DG) is designed to keep the operation under the grid frequency ramp change condition which range of Rate of Change of Frequency (RoCoF) is -2 to 2Hz/sec. However, RoCoF of the grid tends to increase caused by grid inertia deterioration due to the massive penetration of DG such as PV power generation. Therefore, it is necessary to enhance frequency ramp change tolerance of anti-islanding function which may be main factor of unnecessary DG disconnection from the grid. Enhancement of the tolerance of the new type active anti-islanding function which generally used for DG connected to the low voltage distribution is particularly main issue. In the paper, detective characteristic of a representative new type active anti-islanding function on frequency ramp change is analyzed. As the results, it clears that there is a timing when RoCoF reaches more than 4.4Hz/sec. or less than -4.2Hz/sec. in islanding definitely under the condition of keeping required islanding detection time which is less than 0.2 second. From the result, a new islanding possibility judging function is proposed which judges the possibility of islanding by monitoring RoCoF every cycle with threshold levels of above 4.4Hz/sec. and -4.2Hz/sec. The results of computer simulation using a model combined the proposed function with the new type active anti-islanding function show that frequency ramp change tolerance is enhanced about twice as much as current value with no influence on islanding detection time.
報告書年度
2020
発行年月
2021/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
小林 広武 |
電力中央研究所 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
単独運転検出 | Islanding detection |
FRT要件 | FRT requirements |
周波数ランプ変動 | Frequency ramp change |
新型能動的単独運転検出方式 | New type active anti-islanding method |
分散形電源 | Distributed power generation |