電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
C18006
タイトル(和文)
電力系統に生じる高周波振動の固有値解析手法 -電力系統回路の状態方程式の系統的導出-
タイトル(英文)
An Eigenvalue Analysis Method for High-Frequency Oscillations Occurring in Power Systems: Systematic Derivation of State Equations for Power System Circuits
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
【背景】
ある地域の電力系統が全停電に陥った後に復旧を行う際には,系統をいくつかのブロックに分け,無負荷の変圧器を接続したままブロックごとに加圧していく手順が一般的である。このとき,変圧器の飽和も含んだ複雑な高周波振動が生じて,保護や絶縁に関連した問題となる場合があるため,その検討が必要となる。電力系統には他の種類の高周波振動(1)も生じるため,瞬時値解析のように単に現象を再現するだけでなく,現象の理解に示唆を与えるような解析手法が求められている。
【目的】
電力系統に生じる高周波振動の固有値解析を行うための基礎として,簡単かつ系
統的に状態方程式を導出する手法を開発する。
【主な成果】
1. 固有値解析のための状態方程式導出手法の開発
電力系統に生じる高周波振動の固有値解析を行うため,瞬時値解析で定式化に用いられる修正節点方程式(2)あるいはスパースタブロー方程式から状態方程式を導出する手法を開発した。従来の状態方程式導出手法(3)では,グラフ理論に基づく煩雑な手順を経る必要があったが,本手法により簡単かつ系統的に状態方程式が得られるようになった。
2. 全停復旧時に生じる高周波振動の固有値解析
開発手法を用いて,全停復旧時の高周波振動の解析によく用いられる簡略化等価回路の状態方程式を導出し,時間とともに変化する固有値の軌跡を計算した。その結果,同回路は,1つの実固有値と共役対をなす2つの複素固有値を有しており,主に加圧元系統および送電線のインダクタンスと送電線のキャパシタンスによる固有振動,ならびに,主に飽和した変圧器のインダクタンスと送電線のキャパシタンスによる固有振動が交互に現れるのに対応して固有値が移動することが分析できた。また,それぞれの固有振動の周波数と減衰時定数も把握可能となった。本文(第3.2節)では,より現実的な三相等価回路についても開発手法を用いて状態方程式を導出し,固有値を算出している。
(1) 地中ケーブルを介して無負荷の変圧器を加圧する場合に,ケーブルと変圧器の固有振動数がほぼ一致する条件で変圧器の2次側に共振性の過電圧が生じる。また,地中ケーブルに接続された交直変換器では,変換器が発生する高調波の周波数がケーブルの固有振動数と一致する条件で制御上の問題を生じる場合がある。
(2) Natarajanが修正節点方程式から状態方程式を導出する手法を提案しているが,この手法は,対象が線形回路に限られている (S. Natarajan, IEE Proc.-G, Circuits, Devices and Systems, vol. 138, no. 3, pp. 341-346, June 1991)。
(3) 例えば,R. A. Rohrer, Circuit theory: An introduction to the state variable approach, McGraw-Hill, 1969参照。
概要 (英文)
In the case of a wide area power system outage, the power system is divided into several blocks, and the blocks which include unloaded transformers are successively energized block by block. During this black-start energization process, a complicated high-frequency oscillation of system inductance, network capacitance and saturable inductances of the unloaded transformers may occur depending on conditions. Such high-frequency oscillations can be reproduced by the electromagnetic transient (EMT) simulation, but it does not give any insight of the mechanism of the oscillations. On the other hand, the state-space approach gives some insight of the oscillation mechanism through eigenvalue analysis. In this report, a simple method to derive the state-space equations of a transmission network is proposed as the basis of the state-space approach. Then, a high-frequency oscillation occurring in the transmission network is analyzed using the derived state-space equations with eigenvalue analysis. The proposed method is applicable not only to the above-mentioned high-frequency oscillation observed during the black-start energization but also to other high-frequency oscillations occurring in power systems.
報告書年度
2018
発行年月
2019/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
野田 琢 |
エネルギーイノベーション創発センター 配電システムユニット |
協 |
米澤 力道 |
エネルギーイノベーション創発センター 配電システムユニット |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
電力系統 | Power system |
高周波振動 | High-frequency oscillations |
解析手法 | Simulation method |
固有値解析 | Eigenvalue analysis |
全停復旧 | Power system restoration |