電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
C17004
タイトル(和文)
電気自動車用空調システムの考案とサイクルシミュレーションによる性能分析
タイトル(英文)
Performance analysis of a proposed air-conditioning system for electric vehicle
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
世界的に環境規制が強まる中、電気自動車(EV)が注目されているが、その本格的な普及にはまだ多くの課題が残っている。その一つは、エンジン廃熱による暖房が行えないことで、暖房に電気を使用するため、実質的に航続距離が大幅に減少してしまう問題である。また、冬季、窓ガラスに曇りを発生させない目的で導入する外気は暖房負荷を増加させるため、暖房に使用する電力が増え、航続距離が更に低減する。よって、自動車の電動化の流れに伴い、省電力暖房システムの開発が必要である。
目 的
吸着剤塗布熱交換器(以下、塗布熱交、またはDCHEと略称する)を利用したヒートポンプ式EV空調システムを考案する。さらに、その数値モデルを構築し、シミュレーションにより基本性能を把握する。
主な成果
1. 塗布熱交を用いたヒートポンプ式EV空調システムの考案
考案システムは、冬季の暖房、除霜運転、夏季の冷房、中間期の除湿・再加熱運転ができる。暖房運転の概略図を図1に示す。塗布熱交で車室空気を除湿し窓ガラスの防曇ができるので、内気モードでの暖房が可能となり、導入外気分の加熱負荷が減ることで暖房消費電力を削減できる。図2に除霜運転の概略を示す。塗布熱交の吸着熱を室外熱交換器の除霜に使えるので、従来の圧縮機消費電力のみでの除霜方式より省エネになる。
なお、考案システムの冷房及び除湿・再加熱運転に関しては、従来のヒートポンプと同様の運転を行う。
2. シミュレーションによる性能分析
ヒーター、従来ヒートポンプ、考案システムのそれぞれの暖房方式を採用したEV車両の航続距離をシミュレーションにより比較した(図3)。暖房オフ時の航続距離を基準とし、暖房使用中、考案システムを利用したEV車両の航続距離の低減は最も少ないことが分かった。
また、考案システムの除霜方式は従来システムに比べ、電力消費量を90%程度削減できる(図4)。よって、除霜の電力消費量の削減効果を考慮すると、考案システムの航続距離に関する優位性が更に高くなる。
概要 (英文)
In this study, we proposed a heat pump system with integrated desiccant for electric vehicle (EV). This proposed system can realize cooling in summer, heating in winter and dehumidifying-reheating in high-humidity and low-temperature season. Compared to conventional heat pumps for EVs, one of the important characteristics of the system is that the cabin air can be dehumidified by desiccant. Therefore, anti-fogging of the windshields in winter becomes possible under interior-air recirculation, allowing less fresh air into vehicle cabin and less consequent heat loss due to the incoming cold fresh air. Calculation results show that compared to conventional EV heat pumps, the cabin heat load and compressor electric power of the proposed system are decreased by 42 and 38% at an ambient air temperature of -20ºC. Moreover, the defrosting operation of the proposed system is energy saving by approximately 90% compared with conventional hot-gas defrosting operation, because the adsorption heat of the desiccant can be used as an important heating source. Besides, the performance of the proposed system during cooling and dehumidifying-reheating operations is on the same level as that of conventional heat pumps for EVs.
報告書年度
2017
発行年月
2018/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
張 莉 |
エネルギーイノベーション創発センター カスタマーサービスユニット |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
電気自動車 | Electric vehicle |
空調 | Air-conditioning |
暖房 | Heating |
吸着剤 | Desiccant |
除霜 | Defrost |